プロローグ

秩父神社


 転勤族の私は通算すると相当の年数を首都圏で生活しているが、徳川時代から日本の中心的存在である東京には多くの史跡や寺社仏閣など歴史的建造物や庭園等が多く残されているにもかかわらず、恥ずかしながらその手の場所を目的を持って訪ねたことが無かった。

 地方出身の私は、首都圏在住の残余年数が片手に余るようになっており、このまま此処を去ることになれば後悔すると思ったことと、日ごろの運動不足解消のため、都内の史跡を巡ることを思い立った。

 思い立ったら即行動の私は、昨年(2016年)初夏より都内の史跡はもとより、首都圏近郊のパワースポットと称される神社にも出かけた。

 東京都青梅市の御岳山の山頂に座する武蔵御嶽神社に参拝したとき、同行者が社務所から「御朱印」を頂いていた。 参拝記念になるかなと、軽い気持ちで私も御朱印帳を手に入れ朱印を頂いた。そもそも、朱印の意味・由来などに無知な私は、記念スタンプくらいの認識しかなった。

 自宅に戻り、ネットで調べると「御朱印ガール」の存在や朱印収集のマナーに対する賛否両論。そもそも、御朱印とは現世の安穏や死者の追善供養のため経文を寺に収めた証しの印であることに由来することなどを初めて知った。

 一昨年、田舎の父を癌で亡くし今年は三回忌となることと、人生のくぎりの塚となる年齢にも近いことから、自身の振り返りと再発見を兼ねて、納経巡礼を思い立った。 自宅から日帰りが可能な秩父市が三十四観音巡礼地であることを知ったのもきっかけ。

 秩父は大正から昭和の歴史が色濃く残る街で、草花や新緑紅葉など四季折々に自然の豊かな街でもあり、秩父神社の夜祭も有名であり無形文化遺産にも選ばれている。

 白装束の「お遍路さん」のような本格派ではないものの、愛用の一眼を持って季節の旬を眼と食で楽しみながら、ぶらり巡礼を始めることにした。